第0話 プロローグ オブ おっさん


順風満帆。

大学中退、専門学校卒、世間一般でいう学歴のない私にとって、
会社員として成果を認められ、若くしてそれなりのポジションにつくことができたことは、
傍から見るとそう映ったのではないだろうか。

実際、私自身早く認められたくて仕事に取り組んでいたし、
嫌なことや辛いことも、負けたくないという気持ちで乗り越えてきた。
その結果、35歳で新設部署の管理職へ抜擢されたことは喜ばしいことだったと記憶している。

*****

新型コロナの影響も久しいある日の昼休み。
在宅勤務となっていた私は、運動不足の解消で始めた趣味の散歩へと出かけた。
なんてことはない、近所の川沿いを歩くいつもの散歩コースだ。

川にかかる大きな線路を見つけ、
こんなところに線路があったのか、、あの線路まで行ってみたいな、あの線路にタッチして戻ろう
などど別段珍しくもおもしろくもない、そんなことを思いながら歩いていた。

しかし、次の瞬間よぎった考えが、
私の今後を決める大きなきっかけとなる。

あの線路まで行くと13時までに戻れないから、今日は行けないな

社会人からするとどこまでも当たり前の話で、何を言っているんだと思う方もいるだろう。
私が思ったのはこうだ

あの線路まで歩いて行ってみたい。
会社員として時間を拘束されている以上、こんなことですら日を改めないといけないのである。

この違和感は昔からあった。
私はもともと行動力がある方ではなく、連休には旅行でも行きたいなと思いながら、
直前まで飛行機や宿の予約を後回しにしてしまい、結果予約がとれない。なんてことがよくあったのだ。
それ自体はなんら悪いことではない。
そう、何も悪くないのである。

社会人のおっさんともなると体力は徐々に衰えており、
土日の連休に一泊旅行はなかなか勇気がいる。
そうなると自然に3連休4連休に出かけることになってくるのだが、
例えば少し遠出して2泊なんて考えようものなら4連休以上は必須である。

つまり、
「仕事で疲れたから今日はちょっと休もう。明日予約するか…」
おっさんが少し疲れて休んだだけで旅行には行けず、
次回行こうとすれば、また1年待たないといけなくなるのだ。

何かをはじめたい!と考えた時にはできず、週末を待たないといけない。
日々の残業に疲れ、週末に少しだけ寝過ごして少しだけごろごろする。
1日なんてあっという間に過ぎ去り、何かしようと思うとそれだけでまた次の週末まで。

言語化されていなかった違和感を実感したとき、
悲しさと恐ろしさが一気に襲ってきた。

ああ仕事辞めてえ~~クソが

そう、仕事をやめるおっさん、爆誕の瞬間であった。

何かやりたいことがあるわけではない。
ただ、やりたいと思ったその瞬間にできないことは不幸であると気付いた日、
おっさんの孤独な戦いは始まったのである。

これは36歳のごくごく一般的なおっさんが、
怠惰な生活を夢見て仕事を辞めるまでの一部始終である。

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自分が辛かったときや悩んでいたとき、
インターネットで見つけたたくさんのブログや動画に勇気づけられたのを覚えています。
拙いわたくしめが仕事を辞めて解放されるまでの道程を発信することで
また他の誰かの勇気になれば幸いです。


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